現在、話題となっている新型コロナのワクチンは米「ファイザー」と「モデルナ」と「アストロゼネカ」です。前者2つはm-RNAという成分が含まれていいて「ファイザー」は-75℃で半年の保存、2-8℃だと保存期間が5日になります。「モデルナ」は-20℃で半年の保存で、2-8℃で30日間保存が可能です。前回のブログで書きましたように保存が難しく手間がかかるため、接種できる場所が限られてしまいますし保存が正確に行われているかの心配もあります。
それに対して英「アストロゼネカ」のワクチンは通常の冷凍庫で長期保管が出来て価格も安いそうです。これであれば、当院のようなところでもインフルエンザワクチンと同じように接種出来そうです。ただ、ここにも一つ注意しなければならない問題があります。「アストロゼネカ」のワクチンは病原性がなくなるように操作した普通の風邪のアデノウィルスを使って新型コロナウィルスの遺伝子コードの一部を体内に入れる仕組みです。接種すると体がウィルスの侵入を認識してそれに対抗するために、新型コロナウィルスの抗体を作って戦おうと準備します。これによって新型コロナウィルスの感染があって体内にウィルスが入ったら除外する為に戦います。この仕組み自体には問題が無いのですが、使用されている風邪のアデノウィルスは年齢を重ねるほど感染を繰り返しているはずなので、本来接種によって免疫を確保して欲しい高齢という65歳以上の人ほどアデノウィルスに体が慣れていて反応せず注射の効果が出ないかもしれないのです。ワクチンの効果があるかどうかは勿論実際に接種してから統計をとらなければはっきりしたことは分かりませんが、原理的にはやはり効果が低くなると思われます。接種で扱うには便利ではあるのですが、「アストロゼネカ」のワクチン接種は出来れば65歳以下とか、本人がどこの会社のワクチンを接種したいかと選択できるようにしたほうが良いと思われます。それと同時に、ワクチンの接種を心待ちにされている方も多いとは思いますが、政府や製薬会社が様々なことを前倒しにして接種出来るよう準備しているのを待つだけでなく、接種を受ける側もどういうものかという事を理解して自身はどうしたいかという考えを持って欲しいと思います。
さて、所変わって、兵庫県芦屋市の医薬品製造会社「JCRファーマ」では「アストロゼネカ」のワクチンの原液製造を請け負う事になり現在認可申請のために治験が進められています。いきなり神戸の会社に白羽の矢が当たった理由としては、
「生きているウィルスを培養して、ワクチンまで仕上げていくとなりますと、普通の化学製品の合成とは非常に違った繊細な技術、あるいはプロセスが必要となります。JCRファーマーはその領域での経験を非常に豊富にお持ちでしたし、そこにいらっしゃる方々の能力の高さもございましたので」
というアストラゼネカ側のコメントに集約されています。
JCRファーマーの会長は初めは、ワクチンという分野は全くやったことがなく「それは無理でしょう。」と断ったそうですが、「できないことはないんじゃないかな」という意見があったので、チームを作ってやってみようと思考転換をしたそうです。この決断をしたという柔軟性は凄いことだと思います。現在新型コロナは世界を衰退させている死の病として恐れられている状態で、頼みの綱とされているワクチンの培養を請け負うという事は失敗が許されず引き返せない重大な責任を負うという事です。それを新たにチームを組んで挑んでみようという勇気にも近い決断は本当に凄いの一言です。
さあ、新しい未来に期待して進みましょう。