ここ最近のニュースと言えば、新型コロナウィルスの感染者数が600とか800とか、医療崩壊というおどろおどろしい言葉ばかりで、見るに堪えないものばかりです。新しい情報を入れるには仕方ないこととはいえ、うんざりしています。まあ、毎日の報道で慣れてきてしまって本当のウィルスの怖さを聞き飽きた感ですませてしまっているのかもしれません。ただ、港区にクリニックを構えて医療に携わっているにも関わらず、新型コロナの感染症の人を未だ診察していないのです。眼科が中心という性質もあるのでしょうが、以前新型コロナが陽性で改善したというただ1名の人にしか会ったことがなく、医療崩壊と言われている現場は悲惨な状況になっているのにも関わらず私の周囲は全くと言って静かなのです。もしかしたら嵐の前の静けさなのかもしれません。
来院される患者さんとの会話は勿論新型コロナについてが多いですが、その患者さんさえも会社で陽性者が出たらしいという話を間接的にしか耳にしたことがない人ばかりです。ニュースで聞く感染者数の増加で、まるでゾンビがどんどん増えて自分もそろそろその仲間にならざるを得ないという恐怖映画を実際に体感しているような状況です。
さて、こういう世界の中でも心温まる話はいくつかありますので、それを一つご紹介いたしましょう。
アイルランドのホームセンター「Woodie’s」が製作、公開しているクリスマスのCMです。ある一人暮らしの高齢の女性は、日々買い物などで愛犬を連れて外出をします。自宅は古く門の戸は蝶番が壊れていて紐で代わりに縛ってあり、戸を開け閉めするたびにきしむ音を立てて女性は戸を閉めるときに力いっぱい押していました。毎日の外出の際、外では若者たちが立ち話をしていたりと何気ない町の風景が描かれていて、女性はその中で相も変わらない日々を過ごしているのです。しかし、ある雪の日の夜、女性が家に帰ると戸がすっと開いたのです。ひもで縛っていた部分に新しい蝶番が取り付けられて修理されていました。戸を開け閉めして驚く女性から少し離れた道路向かいにいる青年が、工具を片付けながらこう呟くのです。
「ハッピークリスマス、ヒギンズさん」
たった一つの蝶番が心を結ぶという、洒落ていてこれぞCMというセンスが光っています。最後の青年の一言に込められている隣人への思いやり、名前も実は知っているという、町全体での見守り、今必要な何かを教えてくれているような気がしました。