院長ブログ

仕事と休み

昨日クリニック自体はお休みですが、静岡の三島で仕事をして一旦東京に戻り夜最終の新幹線で浜松に来て仕事をしています。午後再び東京に戻りおそらく夜中まで仕事をするでしょう。

朝、ビジネスホテルのカフェでバイキングの朝食を取りながらテレビを見ていました。学校の部活も働き改革で分割するという内容でした。部活の顧問は学校の仕事とは別で100時間以上部活動で時間が取られていて家族と旅行も行ったことが無いという日々だったそうです。しかし働き改革で、生徒達が一部私設の場所で部活指導を受けることになった為、その分今まで部活が済んでからしていた仕事をすぐに処理できる様になったとのことでした。一方生徒の方は、もとプロの経験のある人に教えてもらえるメリットがあり基礎に役立つということでしたが、毎月5000円の費用がかかり学校から施設へ移動もしなければならないというデメリットをあげていました。しかし、これが本来の姿だと思います。学校の先生が奉仕で行ってきた事は自主的で良いとは思いますが、今では課せられたサービス残業で、やりがいという名を借りて無料で働かされていたのです。医者の当直と同じです。法定の労働時間を超えてもカウントされない時間、日本はこれがほとんどですね。私も若い頃、寝ずに働くのが美徳とされていました。多い時には1ヶ月600時間です。タイムカードでの管理など勿論ありませんでした。もう何日も何週間も家に帰ってないなんてザラでした。医療の技術も教えて貰えるのではなく、陰から盗み見をして何度も様々な角度から見てはメモにとり自分で推論していました。そのため、技術を取得するのに時間がかかるのです。その取得した技術が正しいのかどうかも分かりませんでした。ただひたすら息を殺して上の先生の邪魔にならない様影の様に張り付いて見るのです。

一つの例ですが、ある日、私は一人で患者の処置をする事を任されて嬉々として行っていました。しかし突然背後から物凄い勢いで怒鳴られました。大学病院の診察室から廊下まで声が響き渡って、心配した看護婦さんが2人駆けつけてくれました。当時私は医者に成り立ての右も左も分かっていない単なるうら若き女性でしたから、皆私がこれで辞めてしまうと思っていました。しかし、当の私はというと、感動して佇んでいました。やっと存在が認められたのです。それまでは存在すらしてないかの様な扱いでしたが、私を怒ったという事は私のしている事を見ていたという事ですから嬉しかったのでした。まだパワハラとういう言葉さえ存在しない時代に男性の医師も耐えられず何人も辞めていたという状況でしたが、このチャンスを逃がす訳にはいかないと食い付きました。その当時、助教授でテレビにも頻回に出演していた先生は、

「止めろ。何をしているのかわかってやっているのか!」

と怒っていましたが、私は他の先生がやっていた事を自分なりに図書館で調べて行っている事を説明して

「ではどうすればいいのですか?」

と喧嘩越しに近い声で対抗しました。すると助教授が

「ならば、」

と私の手をとって

「この方向じゃない。こちらへ向けて、この角度でだ。この深さも覚えておきなさい。」

と貴重な注射針での手技を伝授してくださいました。本当に貴重な奇跡の瞬間でした。今でも僅かな針先が神経に当たる感覚は指に記憶されています。この様に医療や仕事は習得していくものとして育った世代の自分からしたら、マニュアルで計画通りにという方法はある程度のレベルまでは学べるけれども、神業とも言える手技は伝授される事は無いのではと心配してしまいます。でも、心音が聴けなくても心電図や心エコーがあり、胸の音を聴き分けられなくてもレントゲンやCT、MRIがあり、その上AIという万能選手がいますから時代として仕方ないのかもしれません。

クリエイティブな仕事をされている方々は特に仕事の調子が乗ってきたというところで、時間という縛りで中断しなければならないというジレンマに陥ています。これではこれから先は今までの様な良い作品が出来ない、生まれてこないのではと心配しています。

しかし、人も時間も限りがあります。その中で出来るだけのことをしてみる、そういう習慣に慣れていくのも必要なのかもしれないと思いました。社会人になって4日以上の連続した休みを取ったことがありませんでしたが、今回クリニックは12月29日から1月7日まで10日間お休みをします。休みをしっかりとって脳を休めるのも仕事への大切な準備かもしれません。

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