9月19日のブログに続いてですが、おさらいをします。
【「セファランチン」と「ネフィナビル」の併用が有効であると4月に国立感染症研究所などの研究チームが発表しています。】
という内容でした。
8月末に東京都内で、日本感染症学会総会があり、学術講演会のシンポジウムで国立感染症研究所長の脇田氏が新型コロナウィルスに対する創薬研究について講演され、そのレポートが上がってきました。下記が重要なポイントをまとめた文章です。(なるべく専門用語を簡易なものに置き換えています。複雑な単位も省略しています。)
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新型コロナの患者の特徴として、重症化リスクが高いのは高年齢層であり、85歳以上になると急激に死亡率が高くなります。そのため創薬研究が重要ですが、膨大な資金と時間がかかり製薬企業もギャンブル性が高いため負担が大きいのです。そこで
「ドラッグリポジショニング」という手法:既に別の病気で承認されている薬剤について新たな薬効を見出し、別の病気に対する治療薬として使用できるかどうかを確認する方法:
を始めました。300の薬剤を選び、新型コロナを感染させた細胞に48時間薬剤を投与して細胞の生存率を観察してみました。
その結果、抗エイズウィルス薬「ロピナビル」「ネフィナビル」、免疫抑制薬「ラパマイシン」、ステロイド「ロテプレドノール」、抗白血球減少薬「セファランチン」が効果をしめしました。
次に、これらの薬剤と、既に治療薬候補として知られている「レムデシビル」や「シクレソニド」「ヒドロキシクロロキン」とのウィルス抑制効果を比較してみたところ、
「レムデシビル」が1.8 に対して「ネフィナビル」が0.77、「セファランチン」が0.35、と非常に強い効果を示したため、この2つに絞って研究を進めました。
「ネフィナビル」は新型コロナの複製に必要なメインプロテアーゼを阻害します。
「セファランチン」は新型コロナが細胞の吸着に必須なウィルススパイク蛋白質に結合して細胞に侵入するのを邪魔します。
研究において動物実験を行うのは時間的にも厳しく、既によく使われている薬剤でもある為データーは豊富にあるのでコンピューター上で薬物動態のシュミレーションを行いました。
その結果、「ネフィナビル」だけでは体内の新型コロナは9%まで減少、さらに「セファランチン」との併用では7%まで減少しました。ウィルス排除までの日数は「ネフィナビル」単独では約4日短縮できて、併用ではさらに1日短縮することが可能だという結果が得られました。
さらに、他では抗マラリア薬である「メフロキン」というクロロキンの誘導体がクロロキンよりも強い抗ウィルス効果を示すという事が分かりました。「メフロキン」の経口投与では一度服用すれば2週間以上効果が持続するというメリットも認められたので、実際の治療にも期待が持てる、と締めくくりました。
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予算と時間を削減するために既存の薬から何か良い物がないかと探してコンピューターで確認しているところです。幾つか見つかっているので、それぞれの薬の長所を生かすために併用して治療に当たろうとしているところです。
ここまでは、薬剤についてでしたが、次は新型コロナのメカニズムについてです。
以前、ブログで「サイトカインストーム」についてお話をしましたがそれに対しての反論内容です。
8月末の横浜での日本腎臓学会学術集会で、藤田医科大学麻酔講座教授の西田氏は
「日本国内での新型コロナの重症例に対する人工呼吸器装着例の死亡率は約19%で米NYでの死亡率は約88%。また、エクモ装着症例の日本での救命率は71.2%で欧州での救命率は46%。これは感染爆発によって専門でない医師やスタッフによる管理を余儀なくされた結果だろう」としています。
さらに、新型コロナの重症化のメカニズムの主なものとして「サイトカインストーム」が取り上げられていますが、容態の割には各種のサイトカインの濃度が高くなく、寧ろ重症の割には低い印象があるそうです。西田氏は、「サイトカインストーム」が主な原因ではなく、血管の障害と血栓形成による微小循環不全などが深く関係している可能性が高い、と指摘しています。
面白い話では、日本人、アジア地域の死亡率が低いなどの病態の差は、
『農耕民族と狩猟民族の違いが関連するのではないか』
と仮説を提示されました。生傷の絶えない狩猟民族は凝固機能が発達している。ということと、日本人は欧米人に比べて、術後に血栓が出来にくいことが知られていますから、
新型コロナの重症化は“血栓”が重要なファクターとしています。
さあさあ、複雑な事はさて置いて、
円形脱毛症の薬「セファランチン」を飲んで、納豆を食べましょう。