19日、日本集中治療医学会と日本救急医学会は新型コロナウィルス感染症の薬物治療に関する診療方針を明らかにしました。治療で使う5種類の薬について医師が投与すべきか否かを判断する指針を両学会のホームページで公表しています。この指針については、科学的根拠や効果だけでなく費用対効果、副作用も含めて作成したとのことです。
指針によると、軽症者には唯一、新型インフルエンザ治療薬『アビガン』の投与を弱く推奨するとしています。
中等症・重症患者では、関節リウマチなどで使用されるステロイド薬「デキサメタゾン」の投与を強く推奨し、エボラ出血熱の候補薬「レムデシビル」は弱く推奨しています。
一方、抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」は投与しないことを強く推奨しています。リウマチ薬「アクテムラ」については現時点では推奨しないとなっています。
まず、『アビガン』についてですが、一治療あたりの薬価がはっきりと出ていないのですが、おおよそ2830円です。しかし、現場の情報からは通常の2倍使用しないと効果がはっきりしないとのことですから、5660円でしょうか。抗インフルエンザウィルス薬のタミフルは2720円、リレンザは2942円、イナビルは4279.8円、ラピアクタは6216円、新薬ゾフルーザは4789円ですから、高額とはいえないのでやはり催奇性があるという副作用が問題とされているのでしょう。
「デキサメタゾン」はステロイドですから、肺炎の治療に効果があるとされて、比較的炎症の疾患にはよく使われているので強く推奨となったのでしょう。
「レムデシビル」は以前のブログでも書きましたように、重症化してからの投与に効果があります。しかし、その投与するタイミングが難しいのです。腎臓に負担がかかるという副作用もあります。それと、国内に備蓄が無いのでアメリカから輸入しなければなりません。
「ヒドロキシクロロキン」については、米欧保健当局が心臓への副作用を警告しています。
「アクテムラ」は点滴によって治療しますが、1回に体重に対して8㎎を投与します。60㌔の人だと480㎎必要で、薬価が109,203円で1~4週間ごとに投与しますので、かなり高額と言えます。癌の治療にも使用されて、重度の肺炎を改善し、患者さんの命を救う最後の砦とも言われていますが、費用対価に問題がありそうですね。
初めの頃に、新型コロナの予防薬として私が推奨しました『カモスタット』はここ2か月程全く入荷がありません。政府が備蓄として押さえているためとオフレコで聞きました。つまり、効果があるという事でしょう。昔からあって副作用もほとんどなく、ライセンスが切れていますので安いというメリットもあります。
私が第2の候補として挙げるのは『セファランチン』です。これは、白血球減少治療薬なのですが、エイズ治療薬「ネフィナビル」との併用で有効があると4月に国立感染症研究所などの研究チームが発表しています。癌の治療などでの放射線による白血球の減少や円形脱毛症(皮膚科の治療で私もよく処方します)、面白いところではマムシに咬まれたときに処方します。薬価も安く、1回1錠、1日3回の服用でカモスタットと金額は同等くらいです。