テレビをほとんど見ない私は総じて芸能人に疎く、ましてや若い世代のドラマなどに出ている俳優はほとんど顔と名前が一致しないことが多いのです。しかし、三浦春馬さんは、たまたま友人が半年前に「カッコイイのよ。」と言ってきたのでネットで検索してどんな顔をしているのかを確認したので知っていました。その時に見た写真の印象として、やはり眼科という職業のせいもあって、
(一点の濁りも無い、なんて透き通った瞳をしているのだろう。)
とガラス玉のような瞳にこう思いました。この方がどういう芸能活動をしているかは詳しく知らなかったので、ネットで見ると、子役から始めて、受賞したり、音楽活動など幅広く活躍して現在も新作撮影の真っただ中。世間に非難されるようなスキャンダルも起こしていなく、将来有望というまさに第三者から見ると絵に描いたような人生、成功者、として映るのですが本人としては消してしまいたい人生だったわけです。
ちょうど今日、舞台俳優をしている三浦さんよりは少し若い方が来院されたので話題に上りました。私が
「いったいどうしてこんな結果を選んでしまったのでしょうね。」
と話すと
「三浦春馬までの境地にいかないと分からないと思います。」
と言われました。それを聞いて、確かにお金や人間関係という俗世間での悩みというよりは既にそこからは脱しているレベルでの苦悩だったのかもしれないと思いました。
日本は先進国のわりに自殺者が多いことが有名です。10歳から39歳までの死因は「自殺」です。これには“生きずらさ”というこれから先、生活が悪くなっていくという意識が自殺率に影響しているようです。しかし、「戦争時に自殺率が減少する」というのが世界各国で見られるようで、「倒すべく敵」が存在すれば、意識は社会の連帯に向かい、日常の張り合いが生まれるというのが理由のようです。東日本大震災も戦争時と同様の作用を社会にもたらし、失業率の上昇にも関わらず自殺者数の減少を招いたそうです。今回のコロナ禍では、4月の自殺者数は前年比19.8%減、5月は19%減だったそうです。ただ、現在新型コロナウィルスの問題は先が見えなくなってきています。戦争であれば、誰かが負けましたと白旗を上げれば終わりますが、現状としてはいつ以前の生活に戻れるのかが既に分からなくなっています。そうなると人間にも限界がありますから、例えば今回の三浦春馬さんに同調して自殺者が増えてしまうということも起こりうるのです。感染の可能性があるということで個々が孤立して表面上の姿しか見えてこない中で、お金という経済だけではない問題で蝕まれて命を絶つ例が増えていくことを本当に心配します。
平成が終わって、ようやく平成の時代はこうだったと言い始めていますが、平成の30年間が終わって数年たってからこうなのですから今回の新型コロナウィルスで起きた事もこの状態から抜け出すか、他のもっと大きな問題が起きて関心がそちらの方に移るかで、やっと検証されるのではないでしょうか。現に生活をして巻き込まれている私たちには、何がいけないのかとかどうすればいいのかとかは非常に分かりにくい世の中なのかもしれません。
しかし、すでに多様性の世の中になってしまっています。コロナに合わせてシャープがマスクを製造したり、トヨタがフェイスシールドを作ったり、化粧品会社や酒屋が消毒液を製造したり、世界では掃除機の会社が国から人工呼吸器の製造を依頼されるのです。価値はもう自分で決めていく時代です。仕事もおそらく、リスクヘッジのため企業でさえも兼業することが一般的にもなるでしょう。この世の中の動きを、今迄の時代では体験できなかったことが出来ると積極的に受け入れる柔軟な体制が生き残れる鍵だと思います。
もやもやして分からなくなったら、まず生きることを考えるのです。
一先ずそこからです。人生は。