偉業を成し遂げた直後にその人が発する言葉にはとても興味深いものがあります。例えば、オリンピックでメダルを勝ち取った人の言葉などです。
1996年アトランタオリンピックの女子マラソンの競技で銅メダルを獲得した時に有森裕子さんの「初めて自分で自分をほめたいと思います。」という名言は本当に心を打つものがありました。
また、アテネ・北京と4つの金メダルを獲得した北島康介選手はアテネ１００ｍ平泳ぎで金メダルを獲得した時「チョー気持ちいい」と発しました。この突き抜け方は、今までのアスリートは孤高というイメージを一新しました。
今日は勿論将棋の藤井聡太さんの言葉です。7月16日、史上最年少記録となる17歳で棋聖戦タイトル獲得により30年ぶりの記録更新しました。歴史的瞬間とも言われる程今回注目を受けたのは、密になるスポーツの観戦が例年よりも盛り上がっていなく、座ってゆっくりと経過を安心して観ていられるからではないでしょうか。これによって日本の文化である将棋をやってみようという人が増えていくと思いますのでとても良い事だと思います。藤井聡太新棋聖が四段の当時に高校進学について
「高校は15歳から18歳の3年間になりますけど、１８歳から２５歳までが流動性知能のピークのようで大事な時期なので、難しい選択になるかなと思います。」と述べています。若干14歳でこうも将来への見通しをしているとは恐るべしです。結局高校進学はしましたが、かなりの意味を持って入学を決められたのでしょう。
私は、その時までこの「流動性知能」という言葉さえ知りませんでした。これは、論理的に考えたり、計算をしたり、関係を把握したり、抽象化したり、新しいものを創造したりする能力です。これは老化とともに衰えていくとされていますので、世間から「後2日で18歳だから、今日に結果を出せるだろうか。」 と期待される身とし ては自然に気になるところなのでしょう。
この「流動性知能」に対して「結晶性知能」というものがあります。これはどんどん増えていくもののようです。こちらは60歳までがピークのようですし、個人が長年にわたる経験、教育や学習などで努力によってある程度獲得していける能力です。知能はこの「流動性知能」と「結晶性知能」が組み合わさっているわけです。
さて、藤井聡太棋聖が快挙から一夜明けた17日の記者会見で色紙に今後の抱負として「探究」という文字を掲げました。ネットでは『恐ろしく強い藤井棋聖、かわいい文字で「探究」』と書き込んでいるのは少し笑えました。将棋について「まだまだ分からないことばかり」と謙虚な姿勢で今後のさらなる成長を誓いました。頼もしい限りです。年齢の上下には関係なく、こういう一つの物事に集中してある意味自身の哲学を持って挑み続ける姿は見習うべきものだと思いました。
ブログを書きながら、最近連日早朝の健康診断の仕事をしてから麻布のクリニックで仕事なので平均睡眠時間が3時間を切っているため寝落ちしてしまいました。目が覚めると、付けっ放しにしていたテレビの番組に日野原重明先生の特集をされていました。58歳によど号ハイジャック事件に巻き込まれて、「これ以降は与えられた命」と考えるようになり自身の使命を強く意識されるようになったそうです。ホスピスの病院を立ち上げて更に医療に尽力されました。その中の言葉として
「命は長さではなく、深さです」
というものがありました。これはまさに「結晶性知能」での究極の御言葉ではないでしょうか。
