院長ブログ

「涙」で乳がん検査

今年は新型コロナの問題で軒並み春の健康診断が中止になりました。最近は春と秋に集中するのを分散するために夏や冬に検診の依頼が企業や学校から来たりします。セクハラ問題回避のために女医指定が結構ありますので、毎日10~20件のオーダーが重なって大忙しとなります。セクハラに関しては男女平等だと思うのですが、健康診断の現場では男性の医師だと女性の看護師を同席するという暗黙のルールがありまして、それならば女医を一人確保したほうが便利とばかりに、私めに1年前から声がかかるのです。

男性の診察をするときは最近ですね、IT系の会社に多いのですがシャツを脱いでくれない、上に挙げてくれない人がいるのです。こちらが下からシャツをめくって上に挙げようとしても頑なに首を横に振って拒む時には本当に途方に暮れることがあります。近年電子聴診器なるものがあって服の上からも聴診は出来ますが、直接皮膚に聴診器を当てての音と少し違いがあります。ですから出来るだけ服を脱いで診察をさせていただいた方が助かるのです。逆にガテン系の会社だとこれ見よがしにシャツをパーッと挙げるだけでなく脱いじゃう人もいます。見せたいのか、浅黒く日に焼けた方は脱ぎっぷりが良いです。更に胸に聴診器を当てて音を聞いている時に大胸筋を動かしてくれたりとサービス?満点です。診察とはいえど、初めてお会いする男性と密室に二人きりで先方はパンツ1枚という姿。あまりにも向こうが調子に乗り過ぎた時は、

「あれ?なんか肺の下の方の音…ちょっと気になりますね。胸のレントゲン写真も撮っているんですよね。後で総合的に診断してしてからお知らせがいくと思います。」

と意地悪な事を言ってみたりします。すると途端に神妙な顔をして服を着始めて

「えっ、癌ですか?」

と聞いてきたりします。

「いえいえ、念のためにお話ししているだけです。」

と言って返します。

ただこれくらいは序の口で、身体に綺麗なお柄が描かれている方などは

「大事なところにも絵が入っている。」

と言って閲覧させていただけるような感じになって、丁寧にお断りをしていたところやっぱり見せちゃうんです、こちらが希望しなくても。で仕方なく愛想に

「わーっ、凄いですね。今迄見た中で2番目に凄い。」

と冷静に言ってしまったことがありました。

まあそんなこんなで、かなり横道にそれましたが、健康診断はその人の素が出やすい場所でエピソードには事欠かないです。女性同士の場合でもお尻の穴に近いできものを相談されたり、胸にしこりがあるから気になるので触って欲しいといわれて診察したりします。ある時、硬い砂粒状の腫瘤が触れたので、精密検査を薦めて、初期の乳癌と分かったこともありました。

数年前に歌舞伎役者の奥様が乳癌で亡くなられてから一気に乳がん検査希望が増えたようです。以前あった触診はあまり意味がないという事で少なくなりまして、エコーとマンモグラフィーが主流です。現在一番乳癌の発見率が高いのはマンモグラフィです。(約95%)しかしこの検査、滅茶苦茶痛いのです。片方づつ乳房を透明なプラスティック板で挟んで出来るだけ平らにするためにぐいぐいと圧迫して、その上からレントゲン撮影をします。

私もあまりの痛さから何度か悲鳴を上げそうになりました。済んだ後は大概胸が真っ赤になって検査板の型が残っています。

そんな思いをしながら健康診断を受けるわけですが、昨日、涙で乳がん検査が出来るとニュースでいっていました。なんでも、神戸大学大学院工学研究科の研究グループ【Team TearExo(チーム・ティアエクソ)】が

“細胞が分泌する物質「エクソーム」を好感度に検出してがん患者と健常者を識別することに成功した”

というのです。この「エクソーム」はあらゆる細胞から放出されているのですが、癌細胞と正常細胞から出る「エクソーム」は質が異なり、この癌細胞由来の「エクソーム」を高精度、短時間に検出することが出来るようになったようです。

具体的にはろ紙に含ませた涙を検出用のエクソームセンシングチップ(チップを構成するポリマー層に小さな穴をあけて、その中にエクソームの抗体と蛍光分子をセッティングして、エクソームがあれば抗体が反応して蛍光色で表示する。)に流して、検査機器で最短10分で測定できるというものです。検査での痛みがなく、身体への負担が少なくて、癌検査だけでなく癌治療中の抗がん剤投与後の治療効果や再発のチェックにも応用できるということでおおいに期待できそうです。来年度中に実用化を目指しているようですので待ち遠しいです。

しかし、乳癌は女性だけのものではありません。女性の方が圧倒的に多いのですが、全乳がんの0.5~1%男性にも発症します。ただ認知度が低いため進行してから発見されることが多いです。男性の皆さん御注意を!もしかしたら、数年後健康診断で、男性の患者さんに

「はい、泣いて。」

と言いながら涙を採取しているのかもしれません。

うーん、なかなか男泣かせであります。

 

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