もうかなり昔のことですが、ネイビーのボーイフレンドがいました。
背が高くブロンドヘアーでグリーンヘーゼルナッツ色の瞳。
とてもハンサムで、初めてのデートでは待ち合わせ場所に真っ赤なバラを
1本持って恥ずかしそうに立っている優しい人でした。
横須賀基地内にエスコートしてもらい、ハンバーガーショップで
アメリカンサイズのバーガーをシェアしてパクついたり、
ボーリングをしたりとごく普通のデートを重ねていましたが
いざトレーニングとなると船に乗り、3週間~数ヶ月と会えませんでした。
場所によってはメールさえも交わせなくなってしまうのです。
その上、彼はアメリカ海軍特殊部隊Sealsの入隊を希望していて、
基地内に24時間オープンしているジムで毎日数時間のトレーニングと
勉強を欠かさずしていて自分には非常に厳しく忙しい人でした。
それでも久々に会った時には何十何百もの”I LOVE YOU”という文字を
書き込んだカードを渡してくれたりして心が満たされるというのは
こういうことなんだと思いました。
ある時、Gucciのダブルプレートのネックレスと同じものを
彼がいつも身に着けているので、無知な私は「おしゃれね。」と言ったら
彼は「これはドッグタグと言って、身に着けておかなければならないものなんだ。」
と説明してくれました。
IDなど個人情報が刻印されているプレートが2枚ある意味・・・
・・・もし戦地で殉職し遺体をすぐ回収出来ない場合、
そこにいる仲間が1枚のプレートを本人の歯間にさし込んで下顎を思いっ切り蹴り上げて
プレートを骨にくいこませもう一枚は遺族用に持ち帰るとのことでした。
万が一遺体が酷い損傷を受けても後で判別出来るようにするためということでした。
そして何年かたち、ある日彼の父から夜中電話が入りました。
声の感じから良くない事が起きたことはすぐ分かりました。
とにかく大使館からの情報をひたすら待つしかありませんでした。
しかし、回答はいつまでたっても「行方不明」。
結局あのプレートは戻ってこなく、彼は幻の様に消えてしまいました。
その時戦争とはそういうものなんだと思い知らされました。
「サンディエゴに一緒に住もう。」とプロポーズしてくれた時の
ダイヤの指輪を見つめながらふと想い出しました。