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小説「柿の木」4章-2

患者は黒い焼き板塀に囲まれた武家作りの門をくぐり、敷石を踏んで『大田医院』と彫ってあるすりガラスをはめ込んだ格子戸をガラガラっと開けてやってきた。
玄関に入って、たたきを上がると受付の小さな小窓があり、向かって右は畳張りの待合室で座布団と新聞とすみには火鉢と扇風機が置いてあった。対する左は診察室で、入った正面に見える壁には母恵美が学生時代に描いた油絵が掛けてあった。
奥に患者を寝かせて診る診察台と手前に藤で編まれた脱衣籠や手動の血圧計、体重計、木製の身長計、色あせた人体模型が所狭しと並んでいた。
部屋の真ん中にある大きな木の机は、今はホットミルクが入った茶碗が2つ並んでいるが、いつもは消毒液が入った壺、薄茶色の細い枠が印刷された診察の記録用紙がひろげられ、細長い文鎮と外国製の万年筆が置かれていた。
そして、なぜか万華鏡とビードロがいつもあった。新婚旅行先の長崎で目に留めたものらしく、
「バテレンさんがこうやって吹くんじゃ。」
とシャボン玉色した薄いガラスをよくペコンと鳴らせてみせた。美夏は、この消毒液とアルコールの匂いがほのかに交じりガラス製の注射器のざらざらと擦れる音がする雰囲気は嫌いではなかった。
よくこっそりと祖父の聴診器を耳にあてて、自分の心臓のドックンドックンと脈打つ音を聴いてみたりして、いつか自分も医者になるんだろうなあとなんとはなしに思っていた。
診察室の隅では時折祖母が乳鉢で粉薬を調合していた。きれいに挽いて混ぜ合わせると、天秤に分銅をのせて量り薬包紙を爪先でとんとんと軽くはたいてから、ひとつひとつ包んでいくのだ。
美夏は幼い頃、この薬包紙の折り方を何度も祖母から教わったがいまだに習得出来ていなかった。

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