〝久々にめしでもどうですか?”
本当に久しぶりにメールが届いた。
今日は仕事の後に特に予定が入っていないので
〝じゃあ、あのうどん屋でも”と返事をする。
一時間後、向かい合わせに座って同じ冷やし肉汁うどんを
ずるずるいわせ食べながら、互いに好きなことをしゃべっている。
「この前、箱根にゴルフに行ったけどガラガラで良かったよ。」
私はゴルフをしないので、何が良かったのか分からないが、
「良かったですね。でも噴火なんかで危なくないですか?」
「まあ、箱根と言っても強羅だけどね。」
私は冷やし甘酒を追加オーダーした。すると彼が
「先生、車なのにお酒は飲んでいいの?」
「この甘酒、アルコール0%ですから大丈夫ですよ。」
「ふ~ん。」
彼はお酒を一切飲まない。小学校の頃からゴルフ一筋だ。
「甘酒って体調悪い時には特に吸収がいいし、
夏バテなんかに最適らしいですよ。」
「ぶどう糖だもんな。」
「発酵食品でもありますしね。」
「最近、おれ、胃のあたり調子悪いんだよ。癌かな。」
「先生、早く診てもらったほうがいいですよ。」
「忙しいから、なかなか休みがとれないんだよ。」
「ゴルフには行ってるでしょ。
患者にはきちんと通院しなさいといつも言ってるでしょ。」
「病気が見つかるのがなんか怖くてね。」
彼の実家は江戸時代から代々医者の家系。
「だめですよ。早期発見早期治療でしょ。」
「そうだけど・・・あっそうそう。そういや~こないだ、
ベンツのEクラスが高速で燃えたの知ってる?」
「えっ!燃えたんですか?」
「そう。全焼。老夫婦が寸でのところで逃げて無事だったらしいけど。」
「せっかく、安全を買ったと思ってベンツに乗ったのにね。」
「中国なんかもっとすごい。金持ちのボンボンがフェラーリや
ランボルギーニを走らせて大破させてるらしいよ。」
「へ~っ」
「中国は税金か輸送費が高くてフェラーリなんか7800万するらしいね。」
「へ~っ」
と話しながら食事が終わる。
「先生、やっぱり胃のあたりなんか変だわ。」
帰りに遅くまであいている薬局に行き胃腸薬を買う。医者2人で。
そうして、
「じゃあまた。」
「また。体に気をつけて。」
このまた、来週か。数年後か不明である。