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小説「柿の木」7章

「さあ、座られえ。」
と祖母が座布団をすすめる。い草で幾何学模様を編み込んだものだ。座る時間が長いと、模様の型が肌に赤くくっきりとつくので困るが涼しいのは確かだった。
それに新しいせいもあって草のいい香りがした。
座卓の真ん中に置いた大きな木彫りの盆にのせたスイカに包丁を入れると、サクサクっと下の方までひびが入って裂けた。
はち切れんばかりに熟れている。
「まず、ご先祖さんからじゃ。」
一番きれいな三角の形をしているスイカを選んで、祖母はお皿にのせしずしずと盆棚へと運んだ。
回り灯籠の影絵が床の間の壁や障子に浮かび上がり、祖母の服にもろうけつ染めのように鮮やかな色がちりばめられた。
盆棚には先祖の好物である菓子や果物を添えて、白檀の香を焚くのがこの家の習わしだ。
外で車の止まる音がした。少しして、母が居間に入ってきた。
「一番ええのはもう売れてのおなっとった。棚に1つあったんじゃけど、店の人が『あれはもう予約が入っとりますから。』
 言うて、見せてもくれなんだ。」
「ご苦労じゃったな。暑かったじゃろ。」
と祖母は言いながら美夏と一緒に荷物を受け取り、区分けをした。うだるような暑さも後押ししたのか、母は続けてぐちをこぼした。
「どこへ行っても同じもんばかりじゃ。店と物が増えただけで、反対にちゃんとしたものがのおなっとる。
 『あれは、手間がかかるんでもうけになりませんのじゃ。』とな。」

夕食後、居間でいつものように祖母と母は世間話に花が咲く。通称”ちゃぶ台”の上には裏の畑で採れた枝豆を塩茹でしてプラスチックのざるに入れて置いてある。
虫に食われたのをよけながら、皮からつるっと豆を出しては口の中に放り込む。
「そおいゃ、くみちゃん・・・×○△・・・。」
「ありゃあ、・・・×○△・・・。」
「へえ、そうじゃったん。」
「あそこの跡取りは、飲み屋の女と駆け落ちしてな、昔からちいと頭が足りないんだからな。」
聞き耳をピンと美夏がたてると、
「あんたはまだ子供じゃから、あっちへ行っとられぇ。」
と追い払われる。
そうなると、ひとりで墓石を磨いている祖父の誘いにのる。石は貝で出来ている。
「最近は大きい貝が取れんようになって、なんじゃ、安い中国製の石で出来とるのを売っとる。」
碁盤に石を置くときの響きが違うそうだ。
確かに、祖父が真剣に碁をさすときは小気味良い音がした。

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