これも昔の話、20年前父がテキサス大学の教授をしていた頃
休みを利用して、一時帰国していた父とサンアントニオへ向かいました。
シカゴで乗り換えてワシントンD.Cに数日滞在してからテキサスへ
という行程でした。
まず、シカゴでの入国手続き。ここですでにトラブル発生。
父は外交官J-2ビザでノーチェック。
後ろにいた私も家族なのでと一緒にゲートを通ろうとしたら、
腕をつかまれて有無をいわさず取調べ室へ。
手荷物をテーブルの上に置いて、自分で開けて、中を見せるよう
指示されました。
私がいやがっていると、さらに厳しく命令口調になりました。
しぶしぶ、言われる通りにバックをあけて、中身を1つずつ
テーブルに出してゆきました。
機内は冷えるので、捨ててもいいような毛玉と穴がいっぱい
あいた古いソックスがビロビロと2本。
薄汚れたTシャツが1枚
初めてビジネスに乗ったので記念にと備品が…
食べかけのナッツやクッキーの袋
ランチに出た塩、コショウのセット
フォーク、ナイフ、スプーン、ナプキン、コースター。
トイレにあったマウスウォッシュ、ミニ紙コップ、歯ブラシ…
次々、2、3個ずつ普通なら置いていくような使い捨てスリッパや
嘔吐用紙袋、全部出しきって、はじめに言われたように
スーツケースも私が開けようとしたら、腰に拳銃を携えている
2人の警官が口をそろえて
「もういい」と言いました。
連行された原因は、父の書類に以前家族で米国に住んでいた記録があるのに、
私のパスポートにはその記載がなく、本当に本人かという疑いが
かけられていたようです。
しかし、取り調べで1時間ひき止められていたおかげで、
スーツケースの取り違えが発覚して、間違えて私のスーツケースを
持って行った女性が返しにきたり、
私の事を聞きつけた航空会社が
「そんなにうちの会社を愛してくれているなら。」
と新しいスプーン、フォーク、ナイフのセットを
紙袋に入れて届けてくれました。
取り調べ室から出てきて、ぐったりとなっている私に父は
「ご苦労。どうせなら2セット欲しいと言えば良かったのに。」
と紙袋を指さしました。